この記事でわかること
- Small Cloneの歴史と「なぜ今も売れ続けるのか」
- 1ノブで出せるサウンドの幅と音作りのコツ
- カート・コバーンをはじめとする使用アーティスト
- Neo Clone・Analog Manなど代替モデルとの違い
- 入手方法・価格帯・購入時の注意点
Electro-Harmonix Small Clone──1979年に登場し、40年以上にわたって現役を貫くアナログ・コーラスの定番です。Nirvanaのカート・コバーンが「Come As You Are」で使ったことで一躍有名になりましたが、このペダルの魅力はそれだけではありません。
たった1つのノブと1つのスイッチ。それだけで、深く冷たい揺らぎから12弦ギターのようなきらめき、レスリースピーカー的な回転感まで出せてしまう。シンプルなのに奥が深い──そこがSmall Cloneの本質です。
筆者の実体験
筆者はかつてSmall Cloneを所有しており、カート・コバーンに憧れて「Come As You Are」のリフを弾いたとき、あのイントロの揺らぎが自分のアンプから鳴った瞬間に「これだよこれ」と膝を打ちました。複雑なツマミを回さなくても、踏めば"あの音"が出る。それがSmall Cloneです。
コーラスペダル全般のおすすめをお探しの方は「コーラスエフェクターおすすめ15選」もあわせてどうぞ。
Electro-Harmonix Small Cloneとは?──歴史と基本スペック
開発の背景・歴史
Small Cloneは1979年、Electro-Harmonixから発売されたアナログ・コーラスペダルです。同社のClone Theoryのコンパクト版として開発されました。
オリジナルは1979〜1983年まで製造。1983年にEHXが事業停止したため一度途絶えましたが、2000年にリイシュー(復刻)モデルとして復活し、現在も現行品として販売されています。
ヴィンテージ期のSmall Cloneには、BBD(バケツリレー素子)チップにSAD1024とMN3007の2種類が存在し、筐体のサブタイトルも「Full Chorus」と「Mini-Chorus」の2パターンがあります。どの時期にどの組み合わせだったかに明確な法則はなく、コレクター泣かせのペダルでもあります。
基本スペック・コントロール
Small Clone スペック
- Rateノブ:揺れの速さを無段階で調整
- Depthスイッチ:浅い/深いの2段階切替
- バイパス:トゥルーバイパス(現行モデル)
- 電源:9Vバッテリー付属/9.6V DCアダプター別売
- 筐体:ニッケルスチール製
注意:アダプターは別売りです
Small Cloneは9Vバッテリーが付属しますが、ACアダプターは別売りです。旧リイシューは電源ジャックが3.5mmミニプラグ仕様で、一般的なBOSS型とは異なります。現行モデルはBOSS型に変更済みですが、購入前に必ず確認を。筆者もアダプターの互換性で戸惑った経験があるので、ペダルボードに組み込む方は事前に準備しておくことをおすすめします。
Electro-Harmonix Small Cloneのサウンドの特徴と音作り
サウンドキャラクターの解説
Small Cloneのサウンドを一言で言えば、「太くて深い、液体のような揺らぎ」です。
80年代に主流だったBOSS CE系のきらびやかなコーラスとは方向性が異なります。Small Cloneの揺れはもっとウェットで有機的。音に厚みを加えながら、原音の芯はしっかり残す。余計な回路を通さないシンプルな設計だからこそ、BBDチップの生々しいアナログ感がストレートに出てきます。
DepthスイッチOFFなら、うっすらと奥行きを加えるダブリング的な効果。ONにすれば一気に深いモジュレーションが得られ、ビブラートに近い揺れも表現可能です。ディストーションやファズとの相性も良く、歪みの上にかけても音がぼやけすぎないのがこのペダルの強みです。
おすすめセッティング例(用途別に3パターン)
①Come As You Are再現(グランジ・オルタナ)
- Rate:9〜10時(ゆっくりめ)
- Depth:ON(深い揺れ)
あの冷たくうねるコーラスの核心。クリーン〜軽い歪みで弾くと、イントロの雰囲気がそのまま再現できます。筆者がSmall Cloneで最初に試したセッティングそのものです。
②ナチュラルなダブリング(クリーンアルペジオ向け)
- Rate:12時前後
- Depth:OFF(浅い揺れ)
アルペジオやカッティングに薄くかけるだけで、12弦ギターのような広がりが得られます。バンドの中でもギターの存在感がぐっと増す設定です。
③レスリー風ワーブル(サイケ・シューゲイザー)
- Rate:2〜3時(速め)
- Depth:ON(深い揺れ)
ロータリースピーカーのような回転感。シューゲイザーやサイケデリックなパートで効果的です。歪みペダルの前後で印象も変わるので、いろいろ試してみてください。
Electro-Harmonix Small Cloneを使用しているギタリスト・アーティスト
カート・コバーン(Nirvana)
カート・コバーン(Nirvana)
使用時期:1990年〜1994年
代表的な使用楽曲:Come As You Are、Aneurysm ほかNevermindツアー全般
Small Cloneといえばカート・コバーン。「Come As You Are」のあの幻想的なイントロは、このペダルなしには成立しません。1990年頃から使い始め、Nevermindのレコーディング・ツアーで広く使用されていました。カートの個体がSAD1024チップだったという説がありますが、ギターテックのEarnie Baileyがスペアチップの確保に苦労したとする文献がある一方、決定的な証拠はないとする見方もあります。
カート・コバーンの機材全体についてはこちら→カート・コバーンの使用エフェクターまとめ
J・マスシス(Dinosaur Jr.)
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J・マスシス(Dinosaur Jr.)
使用時期:1980年代後半〜
カート・コバーンと並ぶSmall Cloneの代表的ユーザーです。轟音ファズとフィードバックの中にSmall Cloneの揺れを混ぜ込み、ノイジーでありながらメロディアスな奥行きを生み出しています。ギアダイアグラムでの使用が確認されています。
ジョニー・グリーンウッド(Radiohead)
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ジョニー・グリーンウッド(Radiohead)
使用時期:1990年代〜
Austin City Limitsでのライブ映像でペダルボード上にSmall Cloneが確認されています。Small Stoneフェイザーの使用がより有名ですが、初期〜中期のRadioheadサウンドにおいてコーラス系のモジュレーションも随所で活用していました。
ジョニーの機材全体についてはこちら→ジョニー・グリーンウッドの使用エフェクター一覧
フランク・アイエロ(My Chemical Romance)
フランク・アイエロ(My Chemical Romance)
使用時期:2006年〜(The Black Parade Tour)
コンサートフィルム「The Black Parade is Dead」にてペダルボード上にSmall Cloneが確認されています。エモ/ポストハードコアのシーンでも根強い人気を持つペダルです。
サム・フェンダー
サム・フェンダー
使用時期:2020年代
2021年のPremier Guitarインタビューで「他のどんなブティックコーラスよりSmall Cloneの方がいい。1ノブで使い方は簡単」と語っています。「Leave Fast」のMVでもボード上に確認でき、現代のアーティストにも選ばれ続けていることがわかります。
Electro-Harmonix Small Cloneの後継機・代替モデル比較
現行モデル・リイシューとの違い
現行のSmall Cloneは2000年に復刻されたリイシューです。オリジナルとの主な違いをまとめます。
オリジナル vs リイシューの違い
- BBDチップ:リイシューはMN3007のみ(SAD1024版なし)
- バイパス:リイシューはトゥルーバイパス(オリジナルはFETスイッチ)
- LED:リイシューは赤色5mm(オリジナルは透明or拡散3mm)
- 電源ジャック:現行はBOSS標準タイプに変更済み
- サブタイトル:リイシューは「FULL-CHORUS」(ハイフンあり)に統一
回路設計はほぼ同一。筆者の経験上、一般的な使用環境ではサウンドの差はほぼ気になりません。ヴィンテージに数万円を投じるより、現行品を買って演奏に集中する方が建設的です。
他メーカーのクローン・類似ペダル
| モデル名 | 価格帯 | 特徴 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| Small Clone(現行) | 約8,000〜11,000円 | 本家リイシュー。トゥルーバイパス | ★★★★★ |
| Neo Clone(EHX) | 約5,000〜7,000円 | 小型版。Depthスイッチ付き | ★★★★☆ |
| Nano Clone(EHX) | 約4,000〜5,000円 | 最小構成。Depthスイッチなし | ★★★☆☆ |
| Analog Chorus(Analog Man) | 約30,000〜40,000円 | NOS MN3007使用。Depthノブ化。Howard Davis氏協力のプレミアム版 | ★★★★★ |
| MXR M234 Analog Chorus | 約12,000〜15,000円 | Hi/Loカットフィルター搭載。汎用性◎ | ★★★★☆ |
| BOSS CE-2W | 約20,000〜25,000円 | 技 WazaシリーズのCE-1/CE-2再現。方向性は異なるが名機 | ★★★★☆ |
Electro-Harmonix Small Cloneの入手方法と価格帯
Small Cloneは現行品のため入手は容易です。
価格の目安
- 新品:8,000〜11,000円前後(サウンドハウス・Amazon・楽天等)
- 中古:5,000〜8,000円前後(メルカリ・デジマート等)
- ヴィンテージ(1979〜1983年):海外で200〜300ドル以上
アナログコーラスの名機が1万円前後で買えるコストパフォーマンスは圧倒的です。純粋にサウンドだけで考えるなら、現行リイシューで十分に満足できます。
注意:中古購入時のチェックポイント
旧リイシューは電源ジャックが3.5mmミニプラグの場合があります。パワーサプライとの互換性を事前に確認してください。
まとめ──Electro-Harmonix Small Cloneはこんな人におすすめ
1979年の登場から40年以上。たった1ノブと1スイッチで、太く深い揺らぎ、液体のように滑らかなモジュレーション、歪みとの絶妙な相性──すべてがSmall Cloneならではの個性です。
Small Cloneはこんな人におすすめ
- カート・コバーン/Nirvanaのサウンドに憧れている
- シンプルな操作で深いアナログコーラスが欲しい
- グランジ・オルタナ・シューゲイザー系の音作りを探している
- 1万円以下で定番コーラスを手に入れたい
- 設定に悩む時間を減らして演奏に集中したい
コーラスペダル全体から選びたい方は「コーラスエフェクターおすすめ15選」、グランジ系エフェクター全般に興味がある方は「グランジ・ギタリストが実際に使用したエフェクター10選」もぜひどうぞ。