ProCo RAT 完全ガイド|使用アーティスト・音作り・代替モデルまで徹底解説
ProCo RATの歴史・サウンドの特徴・使用ギタリスト・セッティング例・代替モデルを、実体験をもとに徹底解説。購入を検討中の方にも役立つ完全ガイドです。
この記事でわかること
- ProCo RATの歴史と各バージョンの違い(RAT1・RAT2・Turbo RATなど)
- あの「ジャキジャキ」「ドロドロ」サウンドの作り方と音の仕組み
- Kurt Cobain・Noel Gallagher・Jeff Beckら使用アーティストとその根拠
- 用途別おすすめセッティング3パターン
- Weed Modificationなどモディファイ版・代替モデルの比較
- サウンドハウスでの現行価格と入手のポイント
歪みペダルの世界に「ビッグ3」があります。Big Muff、Tube Screamer、そしてProCo RAT。この3台を制するものが、ロックギターの歪みを制すると言っても過言ではありません。
その中でもRATは最もジャンルを選ばないペダルです。グランジからメタル、ブリットポップ、シューゲイザー、はてはジャズまで。たった3つのノブで、ここまで広い音楽的文脈に応答できるペダルはそうありません。
RAT2は長年の相棒です。使えば使うほど「初期オルタナサウンドにはこれしかない」という確信が深まっていきます。
ProCo RATとは?──歴史と基本スペック
開発の背景・歴史
RATが生まれたのは1977〜78年、ミシガン州カラマズーにあるProCo社の「ネズミが出る地下室」でした。エンジニアのスコット・バーナムが誤ったレジスタ(抵抗)を取り付けてしまったことで、オペアンプが思いがけずオーバーロードし、それまで聴いたことのない歪みの音が偶然生まれました。
最初の試作品は「バドボックスRAT」と呼ばれる手作り品です。1979年に本格量産が始まり、80年代に入るとジェフ・ベックをはじめとするギタリストたちの足元に次々と姿を現すようになりました。
主要なバージョンをまとめると以下のようになります。
| バージョン | 年代 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| The RAT(V1〜V2) | 1979〜83年 | 大型筐体・LM308オペアンプ・Toneコントロール |
| The RAT(スモールボックス) | 1983〜88年 | U字型小型筐体に変更・回路はほぼ同一 |
| RAT2 | 1988年〜 | LED追加・Filterコントロールに変更・現行モデル |
| Turbo RAT | 1989年〜 | クリッピングダイオードをLEDに変更・高ゲイン化 |
| You Dirty RAT | 2004年〜 | ゲルマニウムダイオード採用・ファズ寄りの質感 |
1995年頃から、内部のオペアンプがLM308からOP07DPへ順次切り替わっていきました。これは音のキャラクターに関わる重要な変遷です。ヴィンテージ好きがLM308搭載個体を探す理由はここにあります。
基本スペック・コントロール
ProCo RAT2 基本スペック
- タイプ:ディストーション
- コントロール:Distortion(歪み量)、Filter(高域カット)、Volume(音量)
- 電源:9V DC センターマイナス(BOSS規格)または9V電池
- バイパス:バッファードバイパス(ミレニアムバイパス回路)
- オペアンプ:OP07DP(現行モデル) / LM308(ヴィンテージ個体)
- クリッピングダイオード:1N4148(シリコン)
- サウンドハウス現行価格:¥19,800(税込)
ProCo RATのサウンドの特徴と音作り
サウンドキャラクターの解説
RATのサウンドを一言で表すなら「中域が太く、ザラついた、攻撃的なディストーション」です。
回路の仕組みを簡単に説明すると、LM308(またはOP07DP)という単一のオペアンプで増幅し、シリコンダイオードでハードクリッピングをかける構造になっています。低域と高域をあらかじめカットしてから歪ませるため、1kHz付近の中域にキャラクターが集中し、バンドアンサンブルの中でも埋もれにくい独特の存在感が生まれます。
Filterノブの動きが独特で、時計回りに回すほど高域が削られていく「逆向き」の設計になっています。絞りきる(右いっぱい)と暗くこもった太いサウンド、開ける(左いっぱい)とエッジの効いたジャキジャキしたトーンになります。
Distortionを下げてVolumeを上げれば、グリットの効いたブースター的な使い方もできます。単なるディストーションではなく、セッティング次第でオーバードライブ的なニュアンスからファズに近い轟音まで幅広くカバーするのがRATの真骨頂です。
筆者の実体験
RAT2は長年の相棒です。「初期オルタナの荒削りなジャキジャキサウンドはこれしかない」という感触が、使い込むほど確信に変わっていきます。所有しているWeed ModificationのRAT(Weed-mod)にはFuzzスイッチが搭載されており、切り替えるとMuff感のある粒の細かい歪みに変化します。ディストーションとしての基本的な音とは別の顔を持っており、一台で複数の歪みキャラクターをカバーできる点が面白いです。
おすすめセッティング例(用途別に3パターン)
①90'sオルタナ・グランジサウンド
- Distortion:12〜2時
- Filter:10〜11時(少し高域を残す)
- Volume:アンプとバランスを合わせて
Nirvanaやオルタナ系のジャキジャキしたリフに最適なセッティングです。Filterを少し開けることでスコーンと抜けるミッドが前に出ます。歪みはあまり上げすぎない方が、あの「荒いけど芯がある」感じが出やすいです。
②シューゲイザー的な轟音の壁
- Distortion:2〜4時(高め)
- Filter:9時(右に回して高域カット)
- Volume:やや大きめ
Filterで高域を潰すと、ザラついたローミッドだけが残り、音の壁感が増します。リバーブやコーラスと組み合わせると、Ride・Slowdiveが好むような残響と歪みが融合したサウンドが作りやすいです。
③ブースター的クランチ使い
- Distortion:7〜8時(最小に近い)
- Filter:12時前後
- Volume:最大〜かなり大きめ
Distortionを絞り切ると音が出なくなるため、ギリギリ音が出る位置から微調整してください。アンプのクランチを前段でプッシュする使い方で、TS系ほど中域が盛り上がらず、よりフラットに近いキャラクターでブーストできます。
ProCo RATを使用しているギタリスト・アーティスト
RATの使用者リストは、歴史に残るギタリストたちで埋め尽くされています。以下に確認できたものをまとめます。
【10選】ProCo RATを使用するギタリスト一覧はこちら
Kurt Cobain(Nirvana)
NirvanaのメインペダルはBOSS DS-1とDS-2でしたが、アルバム『Nevermind』のレコーディングにおいてProCo RATも使用されたことが確認されています。プロデューサーのButch Vigは「Territorial Pissings」の制作時にRATを直接ミキサーに突っ込んだと証言しており、これは複数の信頼性の高いソースで裏付けられています。ライブ全般での常用というよりは、特定の録音場面での使用として理解するのが正確です。
Noel Gallagher(Oasis)
Oasis初期の轟音ディストーションを支えたのがRAT2です。「Supersonic」「Live Forever」などの初期代表曲におけるアグレッシブなサウンドはRAT2によるものとされており、これは機材関連の複数のリソースで言及されています。マーシャルJCM900やOrangeとの組み合わせで、あの壁を突き破るような歪みが生まれました。
Jeff Beck
RATが世に広まる大きなきっかけとなったのが、ジェフ・ベックの使用です。製作者のスコット・バーナム自身が「1985年にジェフ・ベックが自分のペダルを使っている写真を見たときが一番嬉しかった」と語っており、これは一次ソースとして確認できます。1980年代中盤から1999年頃まで、ライブおよびアルバム『Guitar Shop』でも使用が確認されています。
Thom Yorke / Jonny Greenwood(Radiohead)
1993〜95年頃のRadioheadにおいて、トム・ヨークはTurbo RATをメインのディストーションとして使用していました。この時期はアルバム『Pablo Honey』と『The Bends』の両作にまたがる時期で、Turbo RATが彼のディストーションサウンドを主に担っていたとされています。ジョニー・グリーンウッドも同様にRATの使用が複数ソースで確認されています。
Mark Gardener(Ride)
筆者は2023年のRide Japan Tourで、2列目からマーク・ガードナーのペダルボードを直接確認しました。そこにProCo RATが確実にありました。曲中、彼がRATを踏んだ瞬間──美しい残響に作られた空間系のサウンドに、ザラついた歪みが一気に混ざり込みます。あれは「歪み」というより、感情の表現としてのノイズでした。シューゲイザーとRATの関係性を、あのライブで改めて実感しました。
James Hetfield(Metallica)
Metallicaのデビューアルバム『Kill 'Em All』(1983年)のレコーディングにおいて、ヘットフィールドがProCo RATを使用したことは複数のソースで確認されています。マーシャル1959SLPとの組み合わせで生まれた、アーリー・スラッシュメタルの質感はRATによるものです。
ProCo RATの後継機・代替モデル比較
現行モデル・バリエーションとの違い
ProCo自身が展開するRATファミリーを整理します。
| モデル名 | 価格(税込) | 特徴 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| RAT2 | ¥19,800 | 定番・バランス型。まずはこれ | ★★★★★ |
| Turbo RAT | ¥27,800 | LEDクリッピングでより高ゲイン・音が太い | ★★★★☆ |
| You Dirty RAT | ¥25,800 | ゲルマニウムダイオードでファズ寄りの質感 | ★★★☆☆ |
| FAT RAT | ¥27,800 | シリコン/MOSFET/ゲルマ切替・9/18V対応 | ★★★★☆ |
| Lil' RAT | ¥17,600 | RAT2と同回路・コンパクト筐体 | ★★★★☆ |
他メーカーのクローン・類似ペダル
RATはBig MuffやTube Screamerと並んで、最もクローンが多いペダルのひとつです。代表的なものをまとめます。
Weed Modification(Weed-mod)
日本のWeed工房によるRAT2のモディファイ版です。LM308への差し替えとパーツの厳選に加え、Fuzzスイッチが搭載されています。通常モードはヴィンテージ寄りのダイナミックなRATサウンドですが、スイッチを切り替えるとMuff感のある粒の細かい歪みに変化します。筆者も実際に所有しており、一台で異なる歪みのキャラクターを持てる点は独自の魅力です。入手性は高くなく、価格もオリジナルの2〜3倍程度になります。
JHS Pedals Crayon
JHSによるRAT系のDNAを持つオールインワン的なペダルです。RATを深く研究してきたJHSならではのアプローチで、よりモダンな扱いやすさが加えられています。
OBNE Criterion
Old Blood Noise Endeavorsによるクリッピング選択式ディストーションです。RAT系の回路をベースに、複数のダイオードモードを切り替えられます。ヴィンテージとモダンの中間を攻めたい方におすすめです。
ProCo RATの入手方法と価格帯
現行のRAT2はサウンドハウスで¥19,800(税込)で常時在庫があります。ディストーションペダルとして考えると、この価格でこれだけの歴史的文脈と実用性を持つペダルはほとんど存在しません。
中古市場(Reverb、メルカリ)では1万〜1万5,000円前後で流通していることが多いです。ヴィンテージのLM308搭載個体(〜1995年頃製造)は状態によって3〜8万円と大きく幅があります。
注意
電源はセンターマイナスの9V DC(BOSS規格と同じ)です。電圧・極性を間違えると回路が破損するリスクがあるため、電源アダプター使用時は必ず確認してください。現行RAT2は電池(9V)でも駆動します。
まとめ──ProCo RATはこんな人におすすめ
RATは「1台でオルタナ〜グランジ〜シューゲイザーをカバーしたい方」にとって、最短距離の答えです。複雑な設定は要りません。3つのノブを動かすだけで、あの時代のあのサウンドが手元に来ます。
Weed Modificationのような改造版に手を出したくなる気持ちもよくわかります。筆者も実際に所有して試しました。ただ結局、「まずノーマルのRAT2を徹底的に使い倒してから判断する」のが正解だと感じています。
ProCo RATはこんな人におすすめ
- 90'sオルタナ・グランジ・ブリットポップのサウンドを一台でカバーしたい方
- 「Filterノブ」を使ったジャキジャキ〜ドロドロの幅広い音作りを楽しみたい方
- シューゲイザーやポストロックで「歪みの壁」を作りたい方
- ヴィンテージ機材の歴史的文脈も含めてペダルを選びたい方
- ¥20,000以下で名盤の音に直結する一台が欲しい方